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2026/4/13
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医師会は本当に「悪者」なのか? |
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~ その前に考えるべきこと ~ ![]() テレビやネットでは、医師会が「強い政治力を持つ組織」として語られたり、時には「悪者」のように扱われることがあります。 しかし、日々医療現場にいる立場としては、そのイメージと実際の姿には少し距離があるように感じています。 今回は、私自身が普段の診療の中で感じていることをまとめてみました。あくまで一人の医師としての個人的見解です。 ◆ 医師会は「強大な組織」なのか? 医師会は、地域医療を守るために行政へ政策提言を行うことがあります。そのため「政治的な力が強い」というイメージが生まれやすいのかも知れません。 しかし実際には、診療報酬は長年にわたり引き下げが続き、現在では医療機関の約6割が赤字と言われています。さらに近年は、経営難による医療機関の閉院件数が過去最多を更新したという報道もあり、地域医療の維持そのものが難しくなっている現状があります。 もし本当に強い政治力があるなら、ここまで医療機関の経営が厳しくなるでしょうか。 医師会の活動は、「地域医療を維持するために、現場の課題を行政に伝える」という役割に近いと感じています。 ◆ 医療には、他の業界ではまずない「独特の出来事」があります。 例えば、マイナカードの保険証利用。導入の際には、「これを導入しないと、将来的に保険医療機関の指定が受けられなくなる可能性があります」という、なかなかインパクトのある通知が届きました。 医療機関としては「これはもう、やるしかないですね......」という空気が自然と漂います。 他の業界で「このシステムを入れないと事業資格を失うかもしれません」なんて話、あまり聞かないのではないでしょうか。 さらに導入後は、オンライン資格確認のために毎月の保守点検料が発生します。 医療現場ではよく、「患者さんのために導入したはずが、気づけば業者さんのために働いているような気分になる」という「あるある」が語られます。 医療費は抑えましょうと言われつつ、固定費だけはしっかり増えていくという不思議な構造に、思わず苦笑いしてしまうこともあります。 そして、医療の世界にはもう一つ特徴があります。 医者は世間知らずな人が多い。 これは自戒も込めてですが、医師は学生時代から医療の世界にどっぷり浸かり、社会経験が少ないまま医師として働き始めることが多い。 そのため、業者さんに強く交渉したり、価格の妥当性を見抜いたりするのが得意ではない人もいます。 結果として、「言われるがまま契約してしまった」「気づけば毎月の固定費が増えていた」ということが起こりやすい構造があります。 これも、他の業界ではあまり見られない特徴かもしれません。 ◆ 医療費が増えているのは、医師のせいなのか? 医療費が増えていることは事実です。しかし、その原因が「医師が儲けすぎているから」という説明は、現場の感覚とは大きく異なります。 むしろ、医療費の中で大きな割合を占めているのは医薬品や医療機器の価格です。 そして、この部分には一般の方には見えにくい構造があります。 ◆ 医薬品・医療機器の価格は、実はとても複雑 医薬品や医療機器には、家電のような「定価」がありません。同じ製品でも、医療機関ごとに仕入れ値が違うことが普通です。 これは、メーカーや代理店の販売方法が複雑で、価格が透明化されていないためです。 本来であれば、医薬品や医療機器の価格を明示し、どの医療機関でも同じ条件で購入できる仕組みを国が整えてくれても良いのではないか。そんなふうに感じることがあります。 しかし実際には、この仕組みを変えることにはさまざまな立場の意見があり、簡単には進まないのが現状です。 ◆ 「医師が悪い」とされる理由 医薬品や医療機器の価格がブラックボックスである一方で、「医療費が高いのは医者が儲けているからだ」という説明は分かりやすく、広まりやすい傾向があります。 医療費の議論では、さまざまな立場の思惑が複雑に絡むため、矛先が医師側に向きやすい構造がある、という指摘もあります。 ◆ 最後に 医療は、患者さん・医療者・行政・企業など、多くの立場が複雑に関わる世界です。 その中で、「誰か一人が悪い」という単純な話ではありません。 ただ、医療費の議論をするなら、医薬品や医療機器の価格の透明化は避けて通れない問題だと感じています。 医師会が悪者かどうかを議論する前に、医療費の仕組みそのものを、もう少し丁寧に見つめ直す必要があるのではないか。そんなふうに感じています。 |
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