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2026/4/21
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業界でコロナ補助金が異なる理由 |
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~ 飲食と医療の支援格差を考える ~ ![]() 昨日、久しぶりに大阪の飲食店に行ったときのことです。店主がふと、こんな話をしてくれました。 「コロナのときは補助金やら何やらで、年間2000万以上入りましたよ。」 思わず耳を疑いました。もちろん、飲食店が大変だったことは理解しています。しかし、医療側の立場からすると、「そんなに出ていたのか」と驚かざるを得ません。 私たち医療機関にも補助金はありましたが、とてもそんな金額ではありませんでした。むしろ、減収の方が大きかったのが実情です。 なぜ、こんな差が生まれたのか。3つの視点から整理してみます。 (1)なぜ日本は医療より飲食を優遇したのか?(政治的な背景) 飲食店は全国に約40万店。その背後には家族・従業員・取引先など、膨大な数の有権者がいます。 政治的には、「飲食店を守る=多くの生活を守る」という分かりやすい構図になり、支援が厚くなりやすかったのです。 実際、休業要請に応じた飲食店には ・1日6~20万円 ・1年間で2000万円以上の支給も珍しくない という「固定額方式」の補助金が出ました。 一方で医療は、「票になりにくい分野」と言われます。 医師会は社会的には大きく見えますが、実際には、 ・会員は全国で約17万人 ・開業医中心で政治的なまとまりは強くない ・医療政策は財務省・厚労省の影響が大きく、意見が通りにくい という構造があり、政治的な影響力は世間が思うほど強くありません。 その結果、コロナ禍では飲食店に比べて医療への支援は後回しになりがちでした。 (2)医師が社会的に誤解されやすい構造 医療の仕事は、外から見えにくい部分がとても多いです。 ・発熱外来の準備 ・感染リスクの高い診療 ・マスク・ガウン・フェイスシールドなどの確保 ・人手不足の中での長時間勤務 こうした見えない努力は患者さんや社会からは伝わりにくい。 その一方で、医療は価格を自由に決められない(診療報酬は国が決める)ため、どれだけ努力しても収入に反映されにくい仕組みです。 さらに当時は、テレビやSNSでも「発熱患者を診ない医療機関」への批判が目立ちました。 しかし実際には、 ・防護用のマスクやガウンが不足 ・発熱外来の補助金は少額(1日最大4万円) ・スタッフの感染リスクが高い ・医療機関内でクラスターが起きれば休診リスク ・診療報酬は低い という状況で、診たくても診られない医療機関が多かったのが現実です。 この現場の事情が見えない構造が、医師への誤解を生みました。 (3)医療機関が補助金で得をしにくい理由 飲食店の補助金が「固定額方式」だったのに対し、医療機関の補助金は「実費補填方式」でした。 つまり、かかった費用の一部だけ補助される仕組みです。 例としては、 ・発熱外来の体制整備 ➡ 1日最大4万円 ・マスク・ガウン等の購入補助 ➡ 実費の一部のみ ・病床確保料 ➡ 1床あたり数万円~数十万円/日 しかし、これらは実際に使った費用の一部だけであり、飲食店のように「売上に関係なく固定額が入る」という仕組みではありませんでした。 さらに、 ・外来患者の減少 ・手術延期 ・入院制限 などで医療機関は大幅な減収に。 結果として、 ・飲食店 ➡ 補助金が売上を上回るケースも多い ・医療機関 ➡ 補助金より減収の方が大きかった という「逆転現象」が起きました。 ◆ まとめ 大阪の飲食店で聞いた「年間2000万円以上の補助金」という話は、決して珍しい例ではありませんでした。 一方で医療機関は、補助金よりも減収の方が大きく、現場は静かに疲弊していきました。 コロナ禍で見えたのは、医療の価値が社会に正しく伝わりにくい構造と、政治的に支援が届きやすい業界と届きにくい業界の差でした。 ・飲食は「影響を受ける人が多い」ため政治的に優先されやすい ・医師会・医師は「票になりにくく、政治的に弱い」 ・医師は「見えない努力」が多く、誤解されやすい ・医療の補助金は「実費補填」で利益が出ない仕組み ・医療機関は補助金より減収の方が大きかった コロナ禍で浮き彫りになった課題を、今後の医療体制づくりにどう活かすかが問われています。 |
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