1) 専門医による内科・生活習慣病の診療
当院でよく経験される幾つかの内科疾患・生活習慣病について、以下の順に簡単にご説明させていただきます。
① 糖尿病
② 高血圧症
③ 脂質異常症
④ 痛風、高尿酸血症
➄ 甲状腺機能低下症
⑥ 便秘症
⑦ 肝機能障害
⑧ アレルギー性鼻炎
⑨ じんましん
⑩ 鉄欠乏性貧血
⑪ 蜂窩織炎
⑫ 帯状疱疹
⑬ 気管支喘息
⑭ 慢性咳嗽
① 糖尿病
健診で、糖尿病を指摘されたことはありませんか?糖尿病の典型的な症状と言えば、口喝、多飲、多尿とされていますが、症状がない場合も多く、血液検査を受けないと診断できません。
気付いた時には、網膜症・腎臓病・神経障害など、糖尿病の三大合併症が進んでいたということもあります。また、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高くなります。
糖尿病と診断されたら、まずは食事・運動療法、それで不十分なら薬物療法となります。
当院の糖尿病治療の特長は2点あります。
1点めは、当院は腎臓専門医・糖尿病認定医が担当するので、糖尿病の治療経験が豊富なことです。末期腎不全(透析)の原因の1位が糖尿病なので、腎臓病で糖尿病を合併している方はかなり多いです。そして、腎臓を長持ちさせるために、糖尿病など生活習慣病の治療は大変重要ですので、腎臓病の治療を行っていると、自然に糖尿病の治療経験も多くなります。
2点めは、患者さんにふさわしいお薬をご提案できることです。最近の糖尿病のお薬は大変種類が豊富で、心臓に良いお薬、腎臓に良いお薬、腎臓病では使用困難なお薬、膵臓に負担をかけないお薬など、様々です。持病なども考えてご提案いたします。
お気軽にご相談ください。
➁ 高血圧症
複数回測定して、家庭血圧135/85mmHg以上なら、高血圧症と診断されます。
自覚症状に乏しいですが、放置すると、動脈硬化が進み、脳卒中、心臓病、不整脈、腎臓病、大動脈瘤などの発症リスクが高まります。
高血圧症の方は、まずご自宅で血圧を測定しましょう。血圧は医療機関では高くなる方が多いですし、家庭血圧は診察室血圧よりも将来の心臓病の予測に優れていると言われていますので、家庭血圧が重要です。
正確に血圧測定するため、手首より上腕で測定する血圧計が良いですね。測定するタイミングは1日2回朝・晩が勧められています。座った姿勢で1~2分安静にしてからにしましょう。
- 朝 起床後1時間以内(排尿後・朝服用前・朝食前)
- 晩 就寝前
治療ですが、まずは、塩分制限、野菜・果物・魚介類などを多く含んだ食事、毎日30分以上の有酸素運動など、生活習慣の改善を行いましょう。それでも高い場合にはお薬です。
お薬に関しては、当院は担当医が腎臓・透析専門医ということもあり、これまで様々な高血圧症例を経験をしておりますので、ご安心ください。一人ひとりの患者さんに合うお薬のご提案が可能です。
例えば、複数の降圧剤を服用しても血圧が高い方、特に朝の血圧が高い方、高血圧症以外に心臓病をお持ちの方、腎臓病や蛋白尿がある方、日頃から塩分を摂りすぎる方などです。
③ 脂質異常症
健診で、コレステロールや中性脂肪が高いと指摘されたことはありませんか?空腹時の血液検査で、LDLコレステロール140mg/dL以上、あるいは中性脂肪150mg/dL以上で、脂質異常症と診断されます。
自覚症状に乏しい生活習慣病ですが、放置すると、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症リスクを高めます。
治療は、まずは食事・運動療法。コレステロールを制限し、油は動物性よりも植物性や魚油を使用し、野菜・果物など食物繊維も多く摂取しましょう。有酸素運動も重要ですね。それでも、改善しない場合はお薬が必要になります。
なお、糖尿病、慢性腎臓病、心筋梗塞、脳梗塞などの持病がある方は、動脈硬化性疾患の発症リスクが高いため、より厳格な管理が必要になります。
④ 痛風、高尿酸血症
暴飲暴食をした翌朝などに、急に足の親指の付け根の関節が赤く腫れて痛くなった、1週間ほど続いた、そんな経験をした方はおられませんか?そう、痛風ですね。
原因は、尿酸値が高いことです。血液に溶けきれない尿酸が結晶として体内に沈着し、痛風発作(痛風関節炎)、尿路結石、痛風腎などを引き起こします。痛風腎は放置すれば腎不全に至ることもあります。
痛風にならないためには、尿酸を下げることが重要です。すなわち、肥満を解消し、水分を十分摂取し、アルコールやプリン体を制限し、お薬を飲むことです。痛風の再発防止の為には、目標尿酸値6.0mg/dL未満が望ましいとされています。
➄ 甲状腺機能低下症
寒がり、発汗減少、皮膚乾燥、嗄声、動作緩慢、体重増加、便秘、難聴などは、甲状腺機能低下症で出現する症状です。
徐脈、心のう液貯留、肝機能障害、高コレステロール血症などを引き起こすこともありますし、認知症やうつ病と間違われることもあります。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足によって基礎代謝が低下し、諸症状が出現する内分泌疾患です。
診断は、血液検査で甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺自己抗体などを測定することで行います。
治療は、海藻類などヨウ素の多い食品を摂り過ぎないようにし、お薬で甲状腺ホルモンを補充します。
⑥ 便秘症
便が硬い、便を出すのが難しい、便が残っている感じがある、便の回数が週2回以下。これら4つのうち、2つ以上当てはまる方は、便秘症と言われています。
便秘症を解消するために、普段からできる対策が3つあります。1つめは、ヨーグルト、ぬか漬け、味噌、キムチ、納豆などの善玉菌の含まれている食事を摂ること。2つめは、ラジオ体操、テニス、ゴルフなどの体をねじる運動をすること。そして、3つめは、排便時に膝を抱え込んで前かがみの姿勢を取ること、です。これらの対策を試しても効果が無いなら、お薬の出番です。
お薬には刺激性下剤と非刺激性下剤があります。刺激性下剤は毎日服用すると大腸が疲弊して効果が落ちることがあるので、ここぞという時に使用しましょう。非刺激性下剤は、便を軟らかくし、お腹も痛くならず、長期間毎日服用しても問題になりにくいです。以上のようなお薬の特徴から、最近は非刺激性下剤が好んで処方されます。
⑦ 肝機能障害
健診で、肝臓の数値が異常だったことはありませんか?肝機能障害ですね。
放置すると、慢性肝炎から肝硬変に移行します。肝硬変に移行すれば、肝臓がんの発生リスクが高くなりますし、食道静脈瘤と言って食道の血管がコブのように腫れて出血することもあります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、重症にならないと症状が現れにくいので、注意が必要です。
当院では、原因を調べるために、問診、血液検査、腹部超音波検査などを行います。
原因としましては、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝疾患(脂肪肝)、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、胆道疾患などがあります。
多いのは、アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝疾患ですが、アルコールを制限し、体重を減量するなどの生活習慣の改善が重要となります。
⑧ アレルギー性鼻炎
くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、鼻と目の痒み...と来れば、アレルギー性鼻炎です。
アレルギー性鼻炎には、通年性と季節性があります。通年性は、年中存在するダニ、ハウスダスト、ペットなどが原因です。季節性は、スギやヒノキなどの花粉が原因で、花粉症とも呼ばれます。
診断には、症状を確認し、採血でアレルギー検査などを行います。
治療は、アレルギーの原因物質を避け、アレルギーの内服薬や点眼薬、鼻噴霧用ステロイド薬などを使用します。
⑨ じんましん
皮膚に、一時的・局所的な痒みを伴う赤いむくみが生じたら、それはじんましん(蕁麻疹)かも知れません。
蕁麻疹で注意が必要なのは、皮膚の症状だけではありません。血圧が下がっていないか、喘鳴がないかなど、全身症状の確認も重要です。アナフィラキシーショックの症状の一部として現れることもあるからです。
蕁麻疹は、免疫細胞の出すヒスタミンという生理活性物質により引き起こされるアレルギー疾患です。
治療はアレルギーの内服薬です。数日で治る方が多いですが、中には1ヶ月以上続く方もおられます。
⑩ 鉄欠乏性貧血
倦怠感、めまい、疲労感、動悸、息切れなどはありませんか?そんな貴方は貧血かも知れません。そして、貧血の8~9割は、鉄不足が原因の鉄欠乏性貧血です。
鉄不足の原因として、女性なら月経過多や子宮筋腫、男性なら消化管出血や潰瘍などが比較的多いと言われています。
血液検査では、血中ヘモグロビン値の低値以外には、血清鉄の低値、総鉄結合能の高値、血清フェリチン値の低値などがみられます。
鉄分の多く含まれた食事、例えば、牛肉やレバーなどを多く摂取しても治りにくいので、お薬で鉄分を補充します。原因が除去されていれば、数ヶ月お薬を続けると治ることが多いです。
⑪ 蜂窩織炎
皮膚が赤く、腫れて、熱感があり、痛みがある。それは蜂窩織炎かも知れません。蜂窩織炎は、検査ではなく、皮膚の見た目で診断されます。
真皮から皮下脂肪組織にかけての細菌感染症で、原因菌としては黄色ブドウ球菌や溶連菌が多いので、それらの菌に有効な抗菌薬で治療を行います。例えば、第1セフェム系抗菌薬やペニシリン系抗菌薬などです。
通常はほぼ100%治りますが、糖尿病や免疫不全のある方は重症化することがあります。
⑫ 帯状疱疹
周囲に赤みを伴った小さな水ぶくれが幾つもみられ、ピリピリとした痛み(神経痛)を伴っていたら、帯状疱疹かもしれません。
原因は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルス、すなわち、水痘帯状疱疹ウイルスです。子供の頃、水ぼうそうが治った後もウイルスがずっと神経に潜んでいて、免疫力が低下したときに、再び活発になり、症状を引き起こします。
治療は抗ウイルス薬ですが、皮膚の症状は治っても、なかなか神経痛が取れず、ペインクリニックに通院される方も少なくありません。
50歳以上の方は発症率が高くなるので、予防のためにワクチンを検討しましょう。ワクチンはかかったことのある方にも接種可能ですよ。
⑬ 気管支喘息
夜間を中心に、喘鳴、咳、痰、息苦しさなどが出る方は、喘息が疑われます。
喘息は、前述した症状があって、胸部レントゲンで明らかな異常が見当たらず、ステロイド薬及び気管支拡張薬の吸入療法が有効な場合、診断されます。
一般的には、前述の吸入療法で、症状が安定して、半年以上経過すれば、徐々にお薬を減らしていきます。
⑭ 慢性咳嗽
8週間以上持続する咳を慢性咳嗽と言います。胸部レントゲンでも原因が特定できない場合、原因となる病気としては、咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症などが多いとされています。
咳喘息は、「喘息の前段階」などと言われますが、喘息と異なり、喘鳴や息苦しさを伴わず、咳だけが唯一の症状です。慢性咳嗽の約半数を占め、3割が喘息に進行すると言われています。喘息の治療が有効です。
アトピー咳嗽は、喉の掻痒感やイガイガ感を伴います。アレルギー薬やステロイド薬が有効です。
胃食道逆流症は、胸やけ、口の中が苦くて酸っぱくなる、食後胸痛、咽頭痛、ゲップなどの症状が伴います。原因は、胃酸が胃から食道に逆流することです。診断は、胃カメラをするのが確実ですが、胃カメラを躊躇する方は、とりあえず胃酸分泌抑制薬を服用して、効果を見ることもあります。
咳喘息やアトピー咳嗽は、検査結果ではなく薬の効果をみて診断に至ることが殆んどです。しかし、少なくとも1ヶ月経過して薬が無効だった場合、別の原因である可能性が高いと言われているので、当院では精査のため専門医療機関へのご紹介をお勧めしています。